
自分が知らない数字を推測するとき、直前に見た数字に近い見積もりをしてしまう。
【アンカリング効果】という心理効果だ。
牛乳が1Lで1,500円。と言われたら「高い!」と思って普段買う牛乳を手に取るだろう。
しかし、値段がはっきりわからないモノはどうだろう?。例えば絵画などのアート作品だ。
最初に高い価格を見ると、その価格が基準になる
絵画展では200万円、300万円する絵画が入口付近に並べられている。そんな絵を見た後、奥にある素敵な絵が25万円で売っていたらどうだろう?買える買えないは別にして直感的に「安い!」と思ってしまう。
絵画という価格を推測しにくい物は、最初に見た価格がアンカーとなって、意思決定に影響してしまう。
逆に、5,000円の絵画から見たら、僕達の基準は5,000からスタートする。
あー。絵画ってこんなに安いんだ!と思った後に15万の絵を買うことがあるだろうか?
いろんな即売会に行けば気がつくが、やはり最初に高い価格の商品を展示している。
どんなものでもアンカーになりうる
販売価格を釣り上げるためのアンカーは金額でないといけない。ということはない。
数字ならどんなものでもアンカーになりうるのだ。
ドレーゼンの研究
MITスローン経営大学院の教授ドレーゼン・プレレク氏が行った研究でアンカリング効果に関する面白いものがある。
ドレーゼン氏は55人の学生にワインやガジェット、書籍など計6つの品物の説明をした。
その後、学生たちに自分の社会保障番号下二桁を上に書くように指示。その数字にドルを付け加えるように言った。40番なら40ドル。
そして、6つの品物をそれぞれその金額で買ってもいいか?イエスかノーかで答えてもらったあと、最高何ドルで買いたいか?を書き込ませた。
その結果、下二桁の数字が大きい(80~99)学生の入札額は高く、下二桁の数字が小さい(1~20)学生の入札額は低かった。
社会保障番号下二桁が上位20%の学生は下位20%の学生より倍以上の値段を提示したのだった。
このことから、アンカーとなる数字はどんなものでも良い。人は直前に見たり考えた数字に意思決定を左右されるということがわかる。
社会保障番号だけでなく、気温、面積、摂取カロリーなどどんな数字でもアンカーになりうる。
身近なアンカリング
スーパーなどに行くと、「お一人様10個まで!」と書かれたポップを目にすることがあるだろう。これもアンカリングの一つ。
「お一人様何個でもどうぞ」と書かれたポップのときと比べると倍近く売上が上がるのだ。
アンカリングの罠に陥らないために
アンカリングに惑わされないためにできる事はない。
強いて言えば、「自分の意思決定は自分の意志ではない」と意識すること。
自分はアンカリングなどには引っかからない。そう思っているが、これは人間の思考の癖なので必ず影響を受ける。
何か数字を提示されたら、それはアンカーとなるものかもしれない。そして次にどんな提案をしてくるのか?アンカーがどのように効いているのかを強く意識することだ。
ドラッグストアでシャンプーを買いすぎてしまうくらいなら問題無い。しかし大きな金額が動くとき(不動産売買や生命保険など)は神経質になり過ぎるくらいが良いだろう。
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